そんな目で見るな。 俺様を、そんな目で見るな。 俺様はお前に、お前が望むものをやる事は出来ない。 精々、食べてやる事しか。 俺様が暴れると、お前は来る。律儀なものだ。 お前は俺様を殴り、得意げな顔で、凱旋する。 俺様は確かに負けるし、手酷い扱いをされる訳だが、それでも、お前のその様を見るのは、…悪くない。 いつからか、俺様が暴れるからお前が来るのか、お前を来させたくて俺様が暴れるのか、判断がつかなくなった。 いつからか、お前は俺様のものであるべきだと、思う様になった。 だってそうだろう? お前は、俺様あってのものなのだから。 だからお前が、お前のその顔を誰かに与える度、俺様はその誰かを憎む。 悔しくて、恨めしくて、堪らない。 その顔は、俺様のものだ。 お前の律儀が、俺様を図に乗らせたのかも知れないな。 お前のその目に気付いたのは、いつだったろう。 ただ、会えれば良かった。お前の成長を垣間みる事が出来れば。 なのに、お前は。 何も知らないとはいえ、そんな目で、俺様を。 俺様は、知っての通り、真っ当な人間じゃない。ろくでなしだ。 愛しいお前からそんな目で見られて、正気で居られる筈がない。 だから、お前が。 お前が、俺様をそんな目で見るのを、止めろ。 今すぐ俺様から離れてくれ。 俺様に寄越せ、と。 ふざけるな、と殴られようと。何らかの危機を察したお前に、二度と俺様に構う気を失わせようと。 意図して言ったのに。 あろうことか、食え、と。 食わずに居れるか。 いくらでも量産されるお前の顔を、俺様の産物であるお前の顔を。 食べちゃいたい程可愛い、なんて言うつもりはない。 そんなんじゃない。 浅ましい、嫉妬。見苦しい、独占欲。 それが望まれると知ったなら。 生憎モラルなど、知らない俺様は。 食わずに居られるか。 ほら、今日も。 俺様が望めば、お前は来る。そしてまた、食べられるつもりだな。 俺様がどんな思いでお前の体を工場の前まで運ぶか、お前は知っているか。お前が『大切に扱われてない』風に見える様に棄て行くその真意を。どんな思いで、お前を工場長に託すのかを。 今日もお前の相棒とやらが、お前を棄て行く俺様をこっそり見ている。ばれてないつもりかね。愚かしく、いっそ微笑ましい。 お前は知らないだろう、彼がどんな目でお前を見ているか。伝播している。血は争えない。 何と浅ましく、見苦しい事か。 俺様は、お前からそんな目で見られる事を、望んじゃいない。 お前の顔を食べる事が、俺様の本当の望みなどではない。 俺様が望むのは、ただ一つ。 子供の成長を見守るのは、親の悦びだよなぁ? なぁ、工場長。貴様なら、分かってくれるか? 俺様の子供達よ。 早く、一刻も早く、逃げてくれ。俺様の邪が、お前達を覆い尽くす前に。 |