シエさんに捧ぐ


eat me の続き 

   buddy me

 僕のこの昏い感情を、君は知らない。


 君はまた、あいつと二人きりになろうとするね。僕が知らないとでも思ったかい? 君が、僕を伴ってあいつの起こした騒ぎを収めに行く理由を。僕は知ってるよ。僕が、最も効率よくあの女をあいつから引き離せると、君が知っているから、だ。


 あの朝、体だけの君を見た時、僕は震えたよ。そして、新しい顔を得た君が浮かべた表情が、いつもの朗らかな君のそれじゃなく、淫靡、といった類いのものだったのを見て、戦慄した。
 君は、気付いてしまったんだね。
 世の中には、知らない方が幸せな事も、たくさん有ると言うのに。

 その日から君は、明確な意志を持って『食べられに』行った。
 君が来る事を願って騒ぎを起こしている筈のあいつは、君の姿を認めると、一瞬、泣きそうな顔をする。
 分かるよ。僕には、理解出来る。
 傷つけたい訳じゃないんだろう? なのに、そうする事しか出来ない。来て欲しくて、来て欲しくない。だからあいつは、実際に君が来ると泣きそうになって、それから、よろこびに震える。
 フン、現金なものだ。

 あいつの顔を見た君は、不敵に笑う。
 そして僕を遠ざけるんだ。二人きりになる為に。二人きりになって、食べられる為に。
 ああ、良いさ。君が望むなら。存分に、食われたら良い。

 自力では戻れない君を、あいつが工場の前まで運んでくる事は、知っている。とても大切な、愛おしいものを運ぶ様に。そのくせ、地に置かれた姿が極めてぞんざいに見える様に、心を配っている。それから君の体を見て、祈る様に目を瞑るんだ。たった一瞬。

 その様子を見つからない様に覗く僕を、君は嗤うかい?
 僕のその時の気持ちが、君に分かるかい?

 僕の白い顔を、君の餡子で汚せたら…

 気味が悪いと嗤うかい?
 ハッ。
 菌に侵されたいと望む君に、僕の何が嗤えると言うんだ。

 全く、破れ鍋に綴じ蓋じゃないか。
 忘れるな、君の相棒は、僕だ。
 君が、望む様にしてやる。そして君は、僕無しでは居られなくなるんだ。
 その日が、楽しみだなあ? なあ、相棒。


 僕のこの昏い感情を、君は知らない。今は、まだ。


leave me に続く 




まさかの第二弾。屈折と倒錯。なんじゃこりゃ。だいぶ気持ち悪いですね。
途中、彼の一人称が『私』だと知ったのですが、直してみたらひたすら気持ち悪かったので、ここでは『僕』とさせていただきます。
タイトルの英語がへんちくりんなのも、知ってますよ。知ってるけど、どうにもならなかったよ。響きとフィーリングです。

シエさん、ちゃんと拒否しないと、また送りつけますよ?

utae 
2012.04.20