子猫 2 |
子猫 (承前) 「不衛生っつう断り文句は無えよな?」 謝るのは、止めた。 俺は野梨子の髪に左手を差し入れ、右手で、患部を拭く野梨子の左手を掴み上げた。 野梨子は口を固く結んだまま、大きく目を見開き、俺を見ている。 一先ず押し倒すのも、止めておく。 「ちゃんと断らないと、キス、するぞ?」 じわじわと、唇と唇の間合いを詰める。 このままのペースならあと一秒で唇が付くというのに、野梨子は何も言わない。 もう、知らない。 ちゅ。 野梨子が身動いだ。 だったらさっさと断れよ、馬鹿。 少し苛ついて、野梨子の患部を見た。またも捕縛される。 一瞬触れただけで離した唇を、野梨子が清めた患部に付けた。 野梨子が身を固くした。 傷の終着点から始発点へ。5cm程の直線を、唇で辿る。 それから、舌で舐め上げた。 野梨子が身動いだ。 もう血の味はしない。 「何か言えよ」 瞳を覗き込めば、意外にも、力強く視線を返された。 「どういう、つもりですの」 声は固いが、冷たくはない。 どうもこうもない。 「こう、したいと、思った」 それから。 「もっと、したい」 止めておくのは、止めることにする。 再び、唇に唇を押し付けた。今度は、一瞬じゃない。たっぷり、10秒。 野梨子が身を固くした。 それから。 唇を離した刹那、酸素を求めて開いた口に、舌を捩じ込む。 野梨子が身動いだ。 でももう気にしない。 俺は、俺のしたい事をする。 野梨子の口の中で動く俺の舌が、野梨子の舌を捕らえた。搦め捕る。 すると、野梨子の舌が動いた。逃げる様にではなく、搦み返す様に。 良いのか? それは合意の合図だぞ? 子猫が、にゃあ、と小さく鳴いていた。 |
あとがき …ごめんなさい。再び。 続けてしまいました。 |
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