子猫 |
いつの間にか清四郎が確保していた“有閑俱楽部”の部室。 六人揃うのは珍しいが、今は俺と、野梨子が居る。 そこに迷い込んだ、子猫。 纏わり付かれた野梨子が、抱え上げ、胸元に寄せた。 すると。 何が気に入らないのか、子猫は、にゃあ、と叫び、爪を立てた。 この野郎。 いや、雄か雌かは知らないが。 広めに開いた丸首から出た、野梨子の白い鎖骨付近の肌に、一本、赤い筋が走った。 血が、じんわりと滲む。 「あ」 患部に気を取られている野梨子に、猶も向かって行く子猫。 立てた爪で野梨子の襟ぐりをびろんと引っ張っている。 この野郎。 下着が見えたじゃねえか。 野梨子は慌てて、子猫を体から離そうとする。 しかし。 子猫は爪を立てたまま。 俺は近寄って、子猫の前足を掴み、爪から服を外す。 下着の中まで見えてしまった。 子猫は俺の捕縛を逃れると、部屋の隅に逃げて行った。 そして。 俺の目は、野梨子の患部に捕縛された。 「魅録?」 動かなくなった俺に、野梨子が声を掛ける。 俺は弾かれた様に、野梨子の患部に口を付けた。 「!!」 野梨子が息を呑んだ。そりゃそうだ、「なにしやがる」と頬を張られても文句は言えない。 しかし、野梨子はそうしない。 口を離し、舌を出して滲んだ血を舐めた。 「!!」 仄かに、鉄と塩の味がした。 「ふっ、不衛生ですわ」 野梨子は言って、部屋の隅に設えたシンクへと駆けた。ハンカチを濡らして患部を拭いている。 俺はゆっくり近付いた。野梨子は身を固くした。 さて、どうしようか。 謝るか? 押し倒すか? 部屋の片隅で、子猫が、にゃあ、と鳴くのが聞こえた。 |
あとがき …ごめんなさい。 思いついたまま、碌に推敲もせず。 |
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