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アイスティー

 野梨子は手を滑らせて、アイスティーを半分程、零した。
 その殆どは、胸元に染み込んでいった。
 魅録は布巾で、それを拭いた。
 ただの親切心からだった。最初は。
 そのうち、自分が野梨子のどこを拭いているのか、自覚した。
 あらかた水分を拭き取って猶、魅録の腕は止まらなかった。
「魅録? もう結構ですわ。ありがとう」
 野梨子は無邪気に言った。
「…いいか?」
 魅録は野梨子の胸元に布巾を押し付けたまま言った。
「え?」
 質問の意図を掴みかねた野梨子は、聞き直した。

 魅録はグラスに半分残っていたアイスティーを、布巾を離した野梨子の胸元に零した。
 驚く野梨子に、魅録は言った。
「このままじゃ、染みになるな。直ぐ脱がなきゃ、風邪ひくな」
 そして、野梨子のシャツの裾を掴むと、一気に持ち上げ、脱がせた。
 野梨子は驚き過ぎて、何も言えなかった。
 野梨子が何の反応も見せないのを見ると、魅録はアイスティーと氷で冷えた野梨子の胸元に、自分の唇を這わせた。
 魅録の唇は、熱かった。
 魅録は、布に染み込まなかったアイスティーを吸い取って飲み、野梨子の体温に溶けずに残っていた氷を口に含んで、野梨子の肌に滑らせていった。
 野梨子が体を固くした。
 魅録は、後手で体を引いている野梨子の背中に腕を伸ばし、ブラジャーのホックを外した。
 肩紐を肩から外し、それをもう少しずらせば、野梨子の乳房が露になる。
 魅録は今一度訊いた。
「いいか?」

 驚きの余り固まっていた野梨子は、気丈に答えた。
「何を、ですの?」
「今更、そういう事、訊く?」
 と魅録は苦笑し、答えた。
「していいか?」
「何故、ですの?」
 野梨子の姿勢は動かない。
「ずっと、したかった。ずっと、好きだったから。…いいか?」
 魅録の眼差しは、真剣だった。
 野梨子の瞳から、驚きの色は消えた。
「今更、許可を求めるんですの?」
 魅録の顔が、野梨子の顔に近づく。
「レイプはしたくない」
 野梨子は目を逸らさない。
「こんな風にしておいて?」
 魅録の睫毛が震えた。
「ごめん。きっかけが、欲しかった」

 突然、野梨子の頭が動き、二人の唇が触れ合った。
 魅録が驚く番だった。
「野梨子?」
「いいですわ」
 野梨子がそう言ったのを聞くと、魅録は唇を強く押し付け、ブラジャーを剥ぎ取った。
 そのまま二人は、床の上で重なった。

 シャツに付いたアイスティーの染みは、もう、取れない。




「ひどいよ、いくらなんでも。こんな事しないぜ?」
「最初は、不倫で無理矢理、の予定だったんだよ、君が妻帯で。その上純に告白までさせてやったのは、私のなけなしの良心だよ?」

と、当時私は脳内で魅録と会話した様です。(どうかしている)

最初期に書いたエロです。エロと言うのは憚られる程ぬるいけれども。
「ブラジャー」って書くのにひどく抵抗感があった事を覚えています。
最後の一文が書きたかったんだよなぁ、確か。

どんなシチュエーションだよ。
魅録の部屋に皆で集まってて、他のメンバーが用事で帰り、うっかり二人きりになっちゃったんだろうね。
他に無いものね。

2007.10.14
2012.06.23
掲載にあたり体裁を整える程度に修正

utae

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