恋愛相談 |
魅録にこぼしたって、しょうがないんだけど。 「なーんかさぁ、あたいだけが、好きみたいでさぁ…」 良い答えなんか、期待してない。色恋沙汰にはとんと役に立たない奴だ。だけど。 「問題有るか? 良いじゃねえか。清四郎がお前を好きだろうがそうでもなかろうが、大事なのはお前が清四郎を好きかどうかだろ?」 何だよ、意外とまとも。だけど。 「…お前は、野梨子に愛されてるから、そんな余裕なんだよ」 ちょっと、逡巡してやがる。 「余裕なんかねえよ。…俺だって、俺ばっか好きだなって、俺ばっか求めてるなって、鬱々とする事も有るけどさ。じゃあ、野梨子が俺をそんなに好きじゃなかったら諦められんのか、ったら、そりゃ無理な話だし。そりゃ、嫌われてんなら無理強いなんてしたくないし、気持ち押し付けんのもしたかないけど、だったら、ちゃんと拒絶しないあいつが悪い。俺の気持ちは俺のもんだし、野梨子の気持ちは野梨子のもんで、俺がどうこう出来るもんじゃねえし」 へえ。意外とうだうだ悩んだり、きっちり吹っ切ったりしてんだな。ちゃんと、恋、してんじゃん。ちょっとご褒美やろうかな。 「野梨子は、『わたくしばっかり好きみたいで』って、泣きそうな顔してた」 つい一週間前の事だ。 「…まじか」 「まじ」 間髪入れずに返してやったら、魅録の顔がかぁと赤くなった。何だこいつら、馬鹿みたい。 「でさ、お前と同じ様な事、言ってた。『でも、魅録がどうであれ、わたくしが魅録を好きなんですから、悩んでも仕方有りませんわね』って。すっげー綺麗に笑いやんの。あたいがお前なら、絶対離さないな、って思った」 「俺だって、離さねえよ!」 そんな目するなよ。あたいに嫉妬したって仕方ないだろ。 「似てんだな、お前ら」 からかう。そして。愉快な気持ちは、急速に冷める。あたいと清四郎は、余りにも似ていないから。 「そうかあ?」 魅録は暢気に、そして朗らかに頬を弛ませた。それから。 「お前と清四郎だって、ある意味そっくりだ」 にやりと不敵に笑われる。 「へ?」 「特別に教えてやるよ。清四郎は、呆れる程頭の良い奴だが、お前の事となるとからっきしだ」 「何だよ、それ」 「呆れる程強いくせに、清四郎の事となるとからっきしの悠理」 「…何だよ、それ…」 「ちゃんと『好き』って言ってやれ」 それって。 「清四郎は、それ、望んでると思う?」 「俺に訊いてどうすんだよ。清四郎の気持ちは、清四郎に訊け」 色恋沙汰にはとんと役に立たない奴だ、と思っていたのに。野梨子と想いが通じただけで、こんな風に変わるんだ。 「恥かいたら、恨んでやる」 「おー、そうしろ」 暢気に笑いやがって。 でもきっと、今の魅録がそう言うなら、間違いないんだ。 恋って、すげえな。 あたいも、こんな風になれるかな。 だったら、あたいをこんなに悩ませる恋ってヤツも、悪いモンじゃないのかも知れないな。 |
あとがき 2011年11月23日に書き出して、一ヶ月程放置して、何とか着地。 悠理独白にしては漢字が多い気もするけれど、硬質な(って言い方であってるかどうかは不明)悠理も好きなのでこのまま(その割に口調は男の子過ぎるかな)。 『色恋沙汰にはとんと役に立たない』この二人が膝付き合わせて恋愛相談してたりしたら、可愛らしいなあ。 |
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